アダプタには大きくて重たい物から手のひらサイズの物まで、様々なアダプタがあります。
アダプタって何のためにあるの?
今回はこのような疑問について説明します。
こんな方におすすめ
- ACアダプタの役割を知りたい
- ACアダプタがどんな事をしているのか知りたい
ACアダプタの役割について
理由は分からないけれど、電化製品を動かすため?
スマホを充電するため?
このように用途は様々ですが、アダプタを使用する理由は2つあります。
それは「交流から直流への変換」と「電圧の変換」です。
ご家庭のコンセントは交流ですが、多くの電化製品は直流で動きます。
また、コンセントの電圧は100Vですが、パソコンやスマートフォンはもっと低い電圧(数V~数十V程度)で動作しています。
そのため、ACアダプタの大きな役割は下記の2つです。
ACアダプタの役割
- 交流から直流へ変換
- 電圧の変換
なお、交流と直流について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
電圧と電流に関しては、中学で習う基本回路を例にして説明しています。
交流から直流に変換する仕組み
交流はプラスとマイナスが交互に入れ替わる特性を持っており、直流は流れる向きが常に1方向のみに流れます。(多くはプラス方向)
直流で動く製品は常にプラス方向へ電流が流れる事を想定して作られているため、プラスとマイナスが入れ替わる交流を流してしまうと故障や不具合の原因となります。
そこでこのように交流を直流に変換します。
一番左にある「〇に~」の図は交流電源を表しています。
▲と描かれた記号は「ダイオード」と呼ばれるもので、通常は一方向のみに電流を流します。
この一方向のみに電流を流すという特性を利用して、逆流防止や、流したい方向へ誘導するといった使い方があります。
なお、「ダイオード」ですが、照明などで利用される「LED」はダイオードの一種で、日本語では「発光ダイオード」、英語では「Light Emitting Diode」の頭文字を取って「LED」と呼んでいます。
Lightは「光」、Emittingは「放つ」、Diodeは「ダイオード」なので、LEDは光を放つダイオードという事ですね。
このようにダイオードでプラス方向やマイナス方向から来た電流を全てプラス方向へ変換しています。
これは「全波整流回路」と呼んでいます。
ただしこれでは波がボコボコしていて、電圧や電流が安定しません。(このような状態を脈流と言います。)
そこで「コンデンサ」と呼ばれる電気を貯める事ができるダムのような部品を挿入します。
コンデンサは充電されると放電し、放電すると充電するというように充電と放電を繰り返しています。
コンデンサにより、上図のようにボコボコした波形を平らな波形にする事が可能となります。
これを「平滑化」と呼んでいます。
また、これを更に平坦にするために、「コイル」と呼ばれる部品を接続します。
「コイル」は直流成分は通して、交流成分は通しにくいという性質があります。
交流成分は波の振幅(上下の揺れ)なので、コイルを通す事により、より直流に近い波形が得られます。
ココがポイント
- 交流から直流へは一方向のみに電流を流す「ダイオード」により、プラス方向に変換している(=全波整流)
- 交流の波打つ波形は電気を貯める「コンデンサ」により、波形を安定させる(=平滑化)
電圧を変える方法
日本のコンセントは交流の100V(ボルト)が一般的です。「V」は電圧の単位で、読み方は「ボルト」と読みます。
対して、スマートフォンやUSBで動くマウスなどは直流の5V、パソコンは物によって異なりますが、10数Vから20数Vで動作しています。
この様に電圧が異なるので、電圧を変更する必要があります。
電圧を変更するために銅線などをグルグル巻きにした「コイル」と呼ばれる物を使用します。
アンペールの法則(右ねじの法則)
このコイルに電流を流すと、磁場が発生します。
中学の理科で「アンペールの法則」や「右ねじの法則」などと習った事があるかもしれません。
この原理について簡単に説明します。
最近ではfacebookなどで「いいね!」などで見られるようになったこの「右ねじの法則」。
親指以外の指をコイルに流れる電流の向きとした場合、親指は磁界の向きを表します。
左の図を見ると、電流は画面に向かって、右から左へ流れていているので、右から左へ包むこむようにして電流が流れています。
このとき、親指は上向き、つまり磁場は上向きに発生することを意味します。
その逆に、電流の向きを親指にしたとき、親指以外の指は発生する磁場の向きも「右ねじの法則」で表せます。
変圧の仕組み(相互誘導)
コイルに電流を流す事で磁界を発生させることが出来ますが、それとは逆にコイルに向かって磁場が発生すると、電流が発生します。
この原理を利用したものに「Suica」などの「ICカード」があります。
自動改札のICカードタッチ面には磁界を発生させる装置があります。
「SUica」などのICカードの中身には細いコイルが巻いてあり、自動改札から出ている磁界を受けて微弱な電流を発生させ、料金の残高などを読み取っています。
片方のコイルに電流を流して磁場を発生させ、その発生した磁場を受けて、もう一方のコイルは電力を発生させています。
このように一方のコイルから発生した磁場によって、もう一方のコイルから電流が流れる現象を「相互誘導」と言います。
この相互誘導において、コイルの巻き数によって、電圧の値が変わります。
そのため、目的の電圧となるようにコイルの巻き数を調整しています。
ココがポイント
- 電圧の変換はコイルを利用している。
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ACアダプタの種類について
ACアダプタには2種類あり、大きくて重い「トランス式」と小さくて軽い「スイッチング式」があります。
トランス式のACアダプタ
大きくて重いアダプタを「トランス式」と言います。
「トランス」は英語で変圧器を意味する「Transfomer(トランスフォーマー)」を略して「トランス」と呼んでいます。
車がロボットに変形する「トランスフォーマー」はご存知かもしれませんね。
「トランス式」は交流から直流に変換する前に電圧変換をしています。
電圧変換に使用するのは「コイル」ですが、「コイル」の大きさは周波数に応じて大きさが変わってきます。
「周波数」とは1秒間に何回振動するかを表した値で、単位は「Hz(ヘルツ)」です。
日本の交流周波数は東日本で50Hz、西日本で60Hzなのですが、周波数が低い場合、コイルが大きくなります。
そのため、「トランス式」のACアダプタは必然的に大きくなります。
さらに詳しく
日本における交流の周波数は、新潟県の糸魚川(いといがわ)と静岡県の富士川(ふじがわ)を結んだ線を境にして、東日本が50Hz、西日本が60Hzと周波数が混在する珍しい国です。
電気が使われるようになった明治時代、日本には電気を発電する技術がなく、東日本はドイツ製の「50Hz」、西日本はアメリカ製の「60Hz」の発電機が使われ、その名残りが今でも残っています。
交流で動作するモーターなどは周波数によって回転数が異なるため、東日本で動作させるよりも西日本で動作させる方が回転が早くなります。
スイッチング式のACアダプタ
交流から直流へ変換する前に電圧変換していた「トランス式」に対し、「スイッチング式」は先に交流から直流へ変換し、その後で電圧変換しています。
電圧変換で使用する「コイル」は周波数の値によって大きさが決まります。
交流は50Hz~60Hzと決まっていますが、直流に変換後は任意の周波数に設定出来ます。
厳密にはONとOFFを高速に繰り返す(=スイッチング)事で電圧を調整しています。
このように電圧変換を高い周波数で行う事により、軽量で小型化になりました。
ただし、「スイッチング式」では、ONとOFFを高速で切り替えることにより、他の機器に悪影響を及ぼすノイズというものが発生するデメリットもあります。
ココがポイント
- ACアダプタには大きくて重たい「トランス式」と小さくて軽い「スイッチング式」がある
- 「トランス式」は最初に低い周波数で電圧変換し、後から交流⇒直流へ変換している
- 「スイッチング式」は最初に交流⇒直流へ変換し、後から高い周波数で電圧変換している
まとめ
パソコン用のアダプタや、スマートフォンやタブレットなどを充電するUSBアダプタなど、身の回りにたくさんあるアダプタですが、主な役割は「交流⇒直流」への変換と、「AC100V⇒DC○○Vへの電圧変換」でした。
要点を下記にまとめておきます。
ココがポイント
- ACアダプタは交流から直流に変えている
- ACアダプタは電圧を変更している
- ACアダプタには大きくて重い「トランス式」と、小さくて軽い「スイッチング式」がある。
昔から使っていた電化製品で、アダプタだけ無くしてしまって使えないなどで困っている場合は、twitterやお問い合わせなどからご連絡ください。
分かる範囲でお答えします。それでは!