オペアンプの反転増幅回路
オペアンプの反転増幅回路は下図のようになります。
反転増幅回路の入力電圧をVi、出力電圧をVoとすると下記の式で表されます。
ココがポイント
$$ V_o = - \frac {R2}{R1} \times Vi $$
オペアンプ反転増幅回路の計算式算出方法
オペアンプの反転増幅回路の出力電圧と入力電圧は下記のようになります。
$$ Vo = - \frac {R_2}{R_1} \times V_i $$
それでは、この計算式を求めてみます。
計算するにあたり、それぞれ下記のように設定します。
説明 | 記号 |
---|---|
入力電圧 | Vi |
入力と反転端子(マイナス)間の抵抗 | R1 |
抵抗R1の電圧降下 | Vr1 |
反転端子(マイナス)にかかる電圧 | V- |
非反転端子(プラス)にかかる電圧 | V+ |
オペアンプと並列に接続した抵抗 | R2 |
抵抗R2の電圧降下 | Vr2 |
抵抗R1とR2に流れる電流 | I |
出力電圧 | Vo |
入力電圧Viから、抵抗R1とR2の電圧降下の結果、出力電圧Voとなるので、下記の式が成り立ちます。
抵抗にかかる電圧は、オームの法則から、「電圧=電流×抵抗値(V=I・R)」です。
$$ V_i - R_1 \times I - R_2 \times I = Vo $$
上記の式を移行して、電流Iを求めます。
$$ (R_1 + R_2) \times I = V_i - V_o $$
したがって、抵抗R1とR2に流れる電流Iは、
$$ I = \frac {V_i - V_o}{R_1 + R_2} \Large \bf \cdots ① $$
となります。
また、抵抗R1の電圧降下Vr1と、抵抗R2の電圧降下Vr2は、
$$ V_{r1} = I \times R_1 \Large \bf \cdots ② $$
$$ V_{r2} = I \times R_2 \Large \bf \cdots ③ $$
となります。
ここから入力電圧と出力電圧の関係を調べるために、オペアンプの特性が必要となるので、計算の途中ですが、オペアンプの特徴を説明します。
反転増幅回路で使うオペアンプの5つの特徴
オペアンプには下記のような5つの特徴があります。▼
オペアンプ5つの特徴
- 入力インピーダンスが高い(=オペアンプに電流が流れ込まない)
- 出力インピーダンスが低い(=電圧降下が起きにくく、計算通りの電圧が得られる)
- 開ループゲインが高い(=増幅度が高く、計算通りの電圧が得られる)
- 入力端子間の電位差がない(=見かけ上短絡、これを仮想短絡[イマジナリーショート、バーチャルショート]と呼ぶ)
- 周波数特性が良い(=直流や低周波でも増幅できる)
上記で説明した特徴と説明を表に直します。▼
特徴 | 説明 |
---|---|
入力インピーダンスが高い | 入力部より前の回路に影響を与えにくい |
出力インピーダンスが低い | 電圧降下が起きにくく、計算通りの電圧が得られる |
開(オープン)ループゲインが高い | 増幅度のようなもので、計算通りの電圧が得られる |
入力端子間の電位差がない | 見かけ上短絡(=仮想短絡、バーチャルショート、イマジナリーショート) |
周波数特性が良い | 直流や低周波でも増幅できる |
ここでは、反転増幅回路の計算式に必要な特徴のみピックアップします。
入力インピーダンスが高い=オペアンプに電流が流れ込まない
オペアンプの入力はインピーダンスが高いです。
インピーダンスとは、交流における電流の流れにくさを表したもので、インピーダンスが高い=電流が流れないという事になります。
交流における抵抗値のようなものですね。
そのため、上記のように入力端子に電流は流れないという前提で計算します。
オペアンプは入力端子間の電位差がない(=仮想短絡[イマジナリーショート、バーチャルショート])
オペアンプには非反転端子(+)と、反転端子(−)の2つがありますが、これらの入力端子間にはほぼ電位はありません。
つまり同電位です。
見かけ上、短絡(ショート)しているため、仮想短絡/バーチャルショート/イマジナリーショートと呼ばれます。
オペアンプの反転増幅回路の計算式を解説
抵抗に流れる電流Iは、
$$ I = \frac {Vi - Vo}{R1 + R2} \Large \bf ・・・① $$
でした。
①の式で電流が外部抵抗にしか流れないように計算しているのは、オペアンプの特徴である「入力インピーダンスが高い=入力端子に電流が流れ込まない」としているためです。
そして、オペアンプの出力電圧と入力電圧の関係を調べるために、「入力端子間の電位差がない=入力端子は同電位」という性質を利用します。
抵抗R1の電圧降下Vr1と、抵抗R2の電圧降下Vr2は、
$$ V_{r1} = I \times R1 \Large \bf \cdots ② $$
$$ V_{r2} = I \times R2 \Large \bf \cdots ③ $$
でした。
ここで、非反転端子(+)がGNDに接続されているため、電圧は0Vとなります。
オペアンプの仮想短絡により、反転端子(-)の電圧も0Vです。(V+=0、V+=V-、なのでV-も0V)
そのため、入力電圧から抵抗R1の電圧降下Vr1が起こり、V-となりますが、このV-が0Vとなります。(V-=V+=0Vのため)
$$ V_i - V_{r1} = V- $$
V+=V-=0Vなので、
$$ V_i - V_{r1} = 0 $$
$$ V_i = V_{r1} \Large \bf \cdots ④ $$
となります。入力電圧と抵抗R1の電圧降下が等しくなりました。
④の式に、下記の②を代入します。
$$ V_{r1} = I \times R_1 \Large \bf \cdots ② $$
$$ V_i = I \times R_1 \Large \bf \cdots ⑤ $$
そして、⑤の式に①の電流Iの式を代入します。
$$ I = \frac {V_i - V_o}{R_1 + R_2} \Large \bf \cdots ① $$
$$ V_i = \frac {V_i - V_o}{R_1 + R_2} \times R_1 $$
この両辺に(R1+R2)を掛けて、
$$ (R_1 + R_2) \times V_i = (V_i - V_o) \times R_1 $$
$$ { R_1 \cdot V_i} + R_2 \cdot V_i = R_1 \cdot V_i - R_1 \cdot V_o $$
R1・Viを消して、両辺を-Voで割ると、
$$ V_o = - \frac {R2}{R1} \times Vi $$
となります。
このようにして、オペアンプの反転増幅回路の式が求められました。
オペアンプ反転増幅回路のまとめ
オペアンプ反転増幅回路の計算式は下記になります。
オペアンプ反転増幅回路の計算式
$$ V_o = - \frac {R2}{R1} \times Vi $$
オペアンプの特徴は下記の通りです。
オペアンプ5つの特徴
- 入力インピーダンスが高い(=オペアンプに電流が流れ込まない)
- 出力インピーダンスが低い(=電圧降下が起きにくく、計算通りの電圧が得られる)
- 開ループゲインが高い(=増幅度が高く、計算通りの電圧が得られる)
- 入力端子間の電位差がない(=見かけ上短絡、これを仮想短絡[イマジナリーショート、バーチャルショート]と呼ぶ)
- 周波数特性が良い(=直流や低周波でも増幅できる)
オペアンプ学習のオススメ本(反転増幅回路や非反転増幅回路など)
オペアンプからはじめる電子回路入門(第2版)
初学者が電子回路を設計できるようになることを目的として、オペアンプ回路から書かれた教科書です。(5章構成)
第1章はオペアンプの基本知識、第2章ではオペアンプの動作原理であるフィードバックについて触れています。
第3章ではダイオードやトランジスタを使った回路、第4章はトランジスタと組み合わせた電力増幅、第5章ではオペアンプの内部回路について学べます。
それぞれの章末に理解度チェックの演習問題があり、知識のおさらいが可能です。