こんな方におすすめ
- センサーの出力電圧とマイコンの入力電圧が合わない
- 分圧回路の計算式がわからない
- 計算した値に近い市販の抵抗の選び方を知りたい
マイコンで外部センサーを使っていると、「電圧が合わない」という場面に遭遇します。
たとえば3.3V入力のPicoやESP32に、5Vで動作するアナログセンサーを接続したいケースです。
この問題を抵抗2本だけで解決できるのが分圧回路です。
この記事を読めば、分圧回路の設計に必要な計算方法・抵抗値の選び方・よくある落とし穴を一通り理解できます。
すぐに計算したい場合は、自動計算ツールを先に使ってみてください。
分圧回路とは
分圧回路は、抵抗を2本直列につないで、接続点から電圧を取り出す回路です。
入力電圧(Vin)を2本の抵抗の比率で分けた電圧が出力(Vout)になります。
部品は抵抗2本だけで、はんだ付けなしでブレッドボードに組めます。

「分圧」という名前のとおり、電圧を比率で分けるだけのシンプルな回路です。
部品点数が少ないため、信頼性が高く故障しにくいのも特徴のひとつです。
分圧回路が役立つ場面
分圧回路は「電圧が合わない」という場面で広く使われています。
よく使われる用途を4つ紹介します。
5Vのアナログセンサーを3.3V入力のマイコンに接続する
Raspberry Pi PicoやESP32はGPIOの入力電圧が3.3Vまでです。
Arduinoのエコシステムには5V動作のアナログセンサーが多く存在します。
センサーの出力電圧を分圧で3.3V以下に下げてから入力すれば、安全に接続できます。
抵抗を2本用意するだけで実現できるため、手軽さが魅力です。
電池や電源の電圧をADCで監視する
9V電池や12V電源の電圧をマイコンのADC(アナログデジタルコンバータ)で読み取る場合、そのままでは入力範囲を超えます。
分圧でADCの測定範囲に収めることで、電池残量の確認や過電圧検知に利用できます。
9Vを3.3V以下に収めるには、R1:R2 = 17:10(例:R1=47kΩ、R2=27kΩ)のような比率で設計します。
サーミスタで温度を測る
NTCサーミスタ(温度で抵抗値が変わる部品)は、温度が上がると抵抗値が下がる特性を持ちます。
固定抵抗とサーミスタで分圧回路を組むと、温度に応じた電圧変化をADCで読み取れます。
温度計や温度制御を自作するときによく使われる手法です。
サーミスタは負荷が軽い(高インピーダンスの)ADC入力に分圧した電圧を渡すだけなので、分圧回路と相性がよい用途です。
5V系から3.3V系へのロジックレベル変換(片方向)
5V系のArduinoから3.3V系のPicoへ信号を送るとき、分圧で電圧を下げる方法があります。
抵抗2本だけで実現できるため、信号線が1〜2本の簡単な用途に向いています。
ただし片方向の信号(送信側→受信側)にのみ対応できます。
I2CやSPIなど双方向通信が必要な場合は、レベルシフターICを使います。
分圧回路は「電流をほとんど消費しない用途」に限って有効です。LEDやモーターなど電流を多く流す部品の電源としては使えません。詳しくは後述の「負荷をつなぐと電圧が変わる」で解説します。
分圧回路の計算式
分圧回路の出力電圧は次の公式で計算します。
Vout = Vin × R2 / (R1 + R2)
各変数の意味です。
- Vin:入力電圧(電源側)
- R1:上側の抵抗(Vinに近い側)
- R2:下側の抵抗(GNDに近い側)
- Vout:R1とR2の接続点から取り出す電圧
覚え方は「分母が全体(R1+R2)、分子がVout側の抵抗(R2)」です。
重要なポイントは、Voutは抵抗値の「比率」だけで決まることです。
R1=1kΩ・R2=2kΩでも、R1=10kΩ・R2=20kΩでも、比率が1:2なら計算結果は同じです。
抵抗値の絶対値ではなく、比率を意識して計算します。
H3見出し:オームの法則とは
分圧の公式は、中学理科で習うオームの法則から導けます。
オームの法則は「電圧・電流・抵抗」の関係を表す式です。
「抵抗が大きいほど電流は流れにくい」という直感と一致します。
変形すると I = V / R(電流 = 電圧 ÷ 抵抗)とも書けます。
分圧公式の導き方(3ステップ)
オームの法則を使って分圧の公式を導きます。

ステップ①:直列回路の電流を求める
直列回路では、R1とR2に流れる電流は同じです。
全体の抵抗は(R1 + R2)なので、オームの法則より:
I = Vin / (R1 + R2)
ステップ②:R2にかかる電圧がVout
Voutは、GNDを基準にしたR2の両端電圧です。
オームの法則より:
Vout = I × R2
ステップ③:①を②に代入して完成
Vout = Vin / (R1 + R2) × R2
= Vin × R2 / (R1 + R2)
これが分圧の公式です。
「なぜR2が分子にくるのか」は、VoutがR2の両端電圧だからです。
計算例
5Vの入力を3.3V付近に下げる組み合わせを計算します。
Vin = 5 V
R1 = 10 kΩ(上側)
R2 = 20 kΩ(下側)
Vout = 5 × 20 / (10 + 20) = 3.333 V
ぴったり3.3Vにはなりませんが、誤差は0.033V(0.66%)です。
マイコンのADCに入力する用途であれば、この程度の誤差は実用上問題ありません。
他の電圧の組み合わせは、記事末尾の計算ツールで確認できます。
目標電圧から抵抗値を逆算する方法
「Voutをこの電圧にしたい」と決まっている場合は、抵抗値を逆算できます。
R2を先に決めてR1を求める公式です。
R1 = R2 × (Vin - Vout) / Vout
例として、Vin=5V・目標Vout=3.3V・R2=10kΩで計算します。
R1 = 10kΩ × (5 - 3.3) / 3.3
= 10kΩ × 1.7 / 3.3
= 5.152 kΩ
5.152kΩという値は市販の抵抗には存在しません。
次のセクションで説明するE24系列から最も近い値を選びます。
E24系列とは?市販の抵抗を選ぶコツ
市販の抵抗は「E24系列」と呼ばれる24種類の基本値しか製品化されていません。
計算でどんな値が出ても、必ずE24の中から最も近い値を選ぶことになります。
これが10の倍数で繰り返すため、5.1kΩ・51kΩ・510kΩなどを選んで購入できます。
先ほど計算した5.152kΩに最も近いE24値は5.1kΩです。
5.1kΩを使った場合の実際のVoutを確認します。
Vout = 5 × 10 / (5.1 + 10) = 3.311 V
目標3.3Vに対して誤差は0.011V(0.33%)です。
実用上まったく問題のない精度です。
計算値にぴったり合う抵抗は存在しないのが普通です。
E24から最も近い値を選んで誤差を確認するのが定石です。
分圧計算ツールはE24の候補を3件まとめて提案するので、手計算の手間を省けます。
負荷をつなぐと電圧が変わる
分圧回路のVout点に「負荷」(マイコンの入力ピンや外部部品)をつなぐと、電圧が想定より下がることがあります。
Vout点に負荷抵抗RLをつなぐと、R2とRLが並列になります。
並列の合成抵抗は必ず元の値より小さくなるため、Voutが下がります。

例として、R2=20kΩの回路にRL=100Ωの負荷をつなぎます。
R2_loaded = 20000 × 100 / (20000 + 100) ≈ 99 Ω
Vout_loaded = 5 × 99 / (10000 + 99) ≈ 0.049 V
3.333Vを出力するつもりが、0.05Vしか出ていません。
マイコンのADC入力ピンは入力インピーダンス(入力端子が持つ抵抗)が通常100kΩ以上です。
そのため負荷の影響はほぼ無視できます。
一方、LEDやモーターは入力インピーダンスが低く、Voutが大きく変動します。
こういった部品の電源として分圧回路を使うことはできません。
分圧回路を電源として使ってはいけない理由
「分圧で3.3Vが出るなら、レギュレータなしで電源が作れる?」という疑問はよくあります。
結論からいうと、分圧回路を電源として使うことはできません。
理由は2つあります。
ひとつは電圧が安定しないことです。
接続する負荷の消費電流が変わるたびにVoutが変動します。
マイコンやセンサーが正常に動作するには、電流量が変わっても電圧が一定に保たれる必要があります。
もうひとつは効率の問題です。
R1とR2には負荷の有無にかかわらず常に電流が流れ続け、熱として電力を消費します。
電池駆動のシステムでは電池の消耗が速くなります。
安定した3.3V電源が必要な場合はレギュレータIC(例:AMS1117-3.3)を使います。
分圧回路は「信号線の電圧変換」と「ADC入力」に限って使うのが正解です。
マイコン別の電圧仕様
分圧回路を使う前に、接続先マイコンの電圧仕様を確認します。
Raspberry Pi Pico 2W
GPIO(汎用入出力ピン)の入力電圧の上限は3.3Vです。ADCの基準電圧も3.3Vで、12bitの分解能があります。
3.3Vを超える入力はGPIOを破損させる恐れがあるため、分圧後のVoutが3.3V以下であることを計算で確認してください。
Arduino UNO
GPIOの入力電圧の上限は5Vです。
ADCの基準電圧は5Vで、10bitの分解能があります。
5Vのセンサーはそのまま接続できます。ただし3.3V系のセンサーを5V ADCに接続すると、ADCの測定範囲をフルに使えないため分解能が実質的に下がります。
ESP32
GPIOの入力電圧の上限は3.3Vです。
ADCは内部的に1.1Vの基準電圧を使っており、非線形な特性があります。
特に2.5V以上の範囲で精度が低下するため、精度が必要な測定には外部ADCの使用も検討します。
電圧仕様はデータシートで必ず確認します。同じ名称のマイコンでもリビジョンによって仕様が異なる場合があります。
分圧計算ツールで即確認
公式への当てはめ自体は難しくありません。
ただ「E24で一番近い抵抗は何か」「この組み合わせで問題はないか」まで調べるには、別途手間がかかります。
自作の分圧計算ツールを使えば、入力を変えるだけでリアルタイムに結果が更新されます。
ボタン操作なしで入力した瞬間に結果が更新されます。
まとめ:この記事で学んだこと
計算が面倒なときは分圧計算ツールを活用してください。
E24候補と誤差まで自動で計算するので、手計算の手間が省けます。
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